profile

きくちかずや
菊地和也 KAZUYA KIKUCHI

学歴・職歴
昭和59年3月富山県立富山中部高校卒業
昭和59年4月東京大学教養学部理科II類入学
昭和61年4月東京大学薬学部進学
昭和63年3月東京大学薬学部卒業
昭和63年4月東京大学大学院薬学系研究科修士課程入学
平成2年3月東京大学大学院薬学系研究科修士課程卒業
平成2年4月(株)武田薬品工業入社
平成2年9月(株)武田薬品工業退職
平成2年10月東京大学大学院薬学系研究科大学院研究生
平成3年4月東京大学大学院薬学系研究科博士課程入学
平成6年3月東京大学大学院薬学系研究科博士課程卒業
平成6年4月日本学術振興会博士特別研究員
平成6年7月カリフォルニア大学サンディエゴ校博士研究員
(化学及び生化学科・薬理学科Roger Y. Tsien教授)
平成7年7月スクリプス研究所博士研究員(化学科Donald Hilvert教授)
平成9年1月東京大学大学院薬学系研究科助手
平成12年12月東京大学大学院薬学系研究科助教授
平成13年12月科学技術振興事業団「さきがけ研究21」
「タイムシグナルと制御」研究領域 研究員 兼任
平成17年7月大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻教授
平成21年8月大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授(兼任)
現在に至る
 
研究分野
Chemical Biology,生物無機化学,生物有機化学,
分析化学,分子薬理学
主な研究テーマ
生細胞内の作用物質を可視化するプローブ分子の
デザイン・合成・生物応用
受賞歴
第29回(平成24年度)井上学術賞受賞<2013年2月>
受賞題目:「化学プローブのデザイン・合成による分子イメージング」
第29回(平成23年度)日本化学会学術賞受賞<2012年3月>
受賞題目:「化学スイッチ機能を有した分子イメージプローブの合成と生物学への応用」
平成23年度 大阪大学功績賞受賞<2011年7月>
第6回(平成21年度)日本学術振興会賞受賞<2010年3月>
受賞題目:「生体内分子を可視化する化学プローブのデザイン・合成・生物応用」
Royal Society of Chemistry(英国王立化学協会) Emerging Investigator Award<2008年12月>
受賞題目:"Design, Synthesis and Biological Application of Chemical Sensor Molecules Which Convert Biological Signals to Chemical Output"
第22回日本IBM科学賞受賞<2008年11月>
受賞題目:「生体内分子を可視化する化学プローブのデザイン・合成・生物応用」
(社)日本バイオイメージング学会 平成16年度研究奨励賞受賞<2004年11月>
受賞題目:"可視化プローブのデザイン・合成によるバイオイメージング"
(財)富山県ひとづくり財団 平成14年度とやま賞受賞<2002年5月>
受賞題目:"生細胞可視化プローブのデザイン・合成・生物応用"
(社)日本薬学会 平成14年度奨励賞受賞<2002年3月>
受賞題目:"生細胞蛍光プローブのデザイン・合成とその応用による可視化解析"
(社)日本化学会生体機能関連化学部会 部会講演賞受賞<2001年9月>
受賞題目:"新規亜鉛イオン蛍光センサー分子のデザイン・合成と生細胞可視化解析"
研究概要
1990年代前半以降、ケミカルバイオロジー(Chemical Biology、化学を用いた生物学研究)は新しい分野として特に欧米で注目を集めるようになっている。現在ではChemical Genetics(化学遺伝学研究)として紹介されている例も多いが、Chemical GeneticsはChemical Biologyに含まれる研究分野である。このChemical GeneticsにはForward Chemical GeneticsとReverse Chemical Geneticsの研究アプローチがある。Forward Chemical Geneticsには、ライブラリー化合物を用いた生理機能分子の探索が代表例としてあげられるが、生理作用をアウトプットとすることで未知の生理機能分子やターゲット蛋白質を見つけ出す研究が代表例として挙げられる。現在、この研究手法は米国において国家戦略に採用され、スクリーニングセンターの設置など多大な労力が費やされている。これに対してReverse Chemical Geneticsは、特定の分子に対する研究道具を作る手法である。この場合は、化学のアイディア一つで切り口を見つけることができることが特徴である。Forward、Reverseともに大切な研究分野であるが、私は日本の大学の研究スケールにおいて世界をリードするには化学のアイディアをもとに研究を行うやり方(Reverse Chemical Genetics)が現実的ではないかと考えた。つまり、基本となるアイディアが良ければ、財力、人材数では及ばなくとも内容では勝る研究ができると考えたのである。そして、この化学アイディアを基に生命科学研究に貢献する研究展開を行ってきた。 化学と生物学の境界領域の研究を行いたいと考えたのは大学2年生の頃だが、この夢が具体案に繋がりだしたのは大学院博士課程に入った時である。この時、研究プロジェクトを自分で立ち上げる機会を持った。化学の知識を生物学に生かすには、物性等の知識がないと取り扱いが困難な物質を扱うのがよいのではと考え、当時(1990年)着目されていた一酸化窒素(NO)を高感度で特異的に測定できる系の創製に取り組み始めた。これがきっかけになり、生体内に機能する物質をセンシングすることで新しい切り口の研究が可能となりうると考えるに至った。つまり、化学プローブをデザインすることが新手法を創り出す研究を始めるきっかけとなった。この後、この分野を深く知るため博士研究員としてFura-2等のCa2+蛍光プローブを作ったR.Y. Tsien研究室に1994年に留学し、蛍光イメージング分野の最先端を学んだ。この間に、次世代の化学研究として、生体に直接働きかける分子設計がChemical Biologyという新たな分野として米国で注目されていることを学んだ。つまり、センシング等の化学反応性に基づいた分析研究材料を創り出すことで、新たな生物機能解析を行うことが可能であることを知ったのである。そこで、現在の研究プロジェクトの準備を始めた。帰国後、新たな蛍光プローブ創製に取り組みはじめた。 これまでに、Chemical Biology研究を行うにあたり化学イメージングプローブをデザイン・合成し生物応用を行ってきた。化学イメージングプローブとは、生物学現象を読み込み可能な光情報あるいは磁気情報に置き換えて従来調べることができなかった分子機能解明を可能とする分子である。そして、生体内分子の反応性に着目することで、この機能解明を可能とする分子を作製し生物応用に成功してきた。この研究の特色として、オリジナルの研究道具を作成し独創的なアプローチをとることができる点が挙げられる。これは、化学研究に基づくことで分子設計が自由できるためであり、本研究で設計する分子は全て新規の構造である。このため、従来の研究方法とは違う手法開発を行うことができる。具体的には以下の内容の研究を行ってきた。 生化学の発展とゲノム解読の進行により細胞内での情報伝達物質やその物質を認識する分子が次々に同定され、試験管内での性質が明らかにされるようになった。現在ではポストゲノムと言う言葉が汎用されるがこの時代には、次の目標である生理的条件での機能の解明が重要視されるようになってきている。このためには細胞をすりつぶさないで、生きたまま機能を調べることができれば多くと考え、の情報が得られると考えられる。この目的のため、細胞内分子と特異的に反応して可視化することができる分子プローブをデザイン・合成し直接細胞に応用することを試みた。この結果、生体内分子の時間と場所を特定した変化を解析する手法を創り出す。この目的には共焦点顕微鏡、顕微分光顕微鏡等を用いる新たな解析手法が有効である。これらの測定ハードウェアは近年急速に発達し、多くの生物学の研究室に当たり前に設置されている。また、グリーン蛍光タンパク質(GFP) を用いた可視化解析も、どの研究室においても使用されるレベルの汎用性のある手法となった。しかし、ソフトウェアとも言うべきセンサー分子としてはGFP類縁体以外には少なく、調べたい分子に対してセンサー分子を創り出す研究はCa2+蛍光プローブを除いては皆無であった。この状況下、私は分子をデザインする発想が鍵技術の創製へと繋がる分子認識あるいは酵素反応を分光情報へと変換できる化学プローブを分子設計した。この結果、脳神経系におけるZn2+の生理機能、及びFRET型センサー分子を用いたチロシンフォスファターゼの細胞増殖時の活性変化等を可視化解析によって初めて明らかにすることに成功してきた。 現在ではこれまでの可視化プローブを開発した経緯をふまえ、さらに汎用性高い手法開発を行っている。この場合、細胞イメージングにとどまらず広く生体内における分子機能機能解析を可能とする研究展開を行っている。